1998/11〜1999/4
『川原をあるくと』:1998/11/29 『センダンのつながり』:1999/1/1 『ボールがいっぱい』:1999/2/5 『かわせみ』:1999/3/6 『カメラが壊れた』:1999/3/14 『きたない』:1999/4/4 『１０円玉のうろこ』:1999/4/24
 武庫川散歩レポート 1996年 10月〜12月 |
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| 武庫川散歩 今 |
きょうはとてもいい天気で、
高い空をあおぐと
透き通った冷やっこい風が、
まばらになった紅葉をゆらしていて、
その葉の揺らめきが、光をキラキラさせていて、
うーん、
きれいだ。
きれいが染み込んでくる。
見慣れている風景に何度も感動する。
それは、景色という「絵」に感動しているのでなく、
その変化に感動しているのかもしれない。
その景色がめぐってきたことに心がふるえているのかもしれない。
えっと！、しばらくレポートを休んでいると、
書き出しが難しいね。
きょうは空も水も木も草も、みんな喜んでいるようないい天気で
久々に気持ちがゆっくりしています。
武庫川は台風のせいで、葦やキリン草が全滅。
だから近頃の水辺は彩りが少なくてウス茶色一色です。
でも見通しはよくなった。
私と文太は（レポートは休んでも）散歩を一日も休まず、
毎朝、武庫川観察に出かけています。
ただ、去年みたいに、川下から川上に向けて水辺を歩こうとすると、
これが大変。
葦やキリン草は確かに倒れたけど、
流れの方向を向いたまましっかりと枯れて「ここに葦ありき」を主張している。
倒れても葦、腐ってもタイ、ぱっきりときっぱりと格調高い枯れかたをしている。
とにかく
すべての草木がこっちに向かって倒れ込んでいて、
一歩毎に前進の邪魔をする。
足はつまづくし、
倒れてる相手をまたごうとすると、
足を上げた分、ヤツラも起き上がってきて
強硬に抵抗する。
私と文太はヒモでつながれているから、
そのヒモがまたいちいち引っかかる。
「ナンヤネん君らはいったい！」
思わず叫びたくなる。
死んでも死にきれないキョンシーの怨念がまとわり付いているかのよう（ちと大袈裟？）。
文太もたまらずジャンプ、ジャンプで乗り切ろうとするけど、
哀しいかな、彼もヒモでつながれる身。
華麗なジャンプが空中で引き戻されることたびたびで、
「クィ〜」と不満の一声。
ところが！
川上から、流れに従って川原を歩くときは、これは！おおー！快適。
すべての草木は私達の進む方向へ、いざなうようにゆれて誘う。
まるで十戒の海のように、進むべき道は目の前に開かれる（これもちと大袈裟？）。
とにかく、このごろの武庫川の川原（水辺）をあるくなら、
川下方向を向かないとエライ目に会います。
久しぶりに、レポートを再開しました。
忙しくて、ほったらかしの日々は、心にいつも「更新、コーシン」と責めるものがあり、
それはそれなりにつらいものでした。
メールも何通か、掲示板にも．．．ありがとうございます。
私も文太も元気で、毎朝武庫川に出かけていますから、
更新は遅くても必ずします。
これからもよろしく。
新年、あけましておめでとうございます。
これまでの年とこれからの年の区切りがあるのは、けじめがキリリとしていて、
いいことだとは思う。
文太の首にも土佐犬のようなしめ飾りをつけて散歩に行ったりなんかして。
でも実際のところ、川の様子は去年である昨日となんのかわりもない。
水は（このごろ減ったけど）切れ目なく流れてくるしね。
それで、去年から今年にまたがって、とにかくこのごろの武庫川を歩いて
しみじみ季節を感じるのは、センダングサの種が服のいたるところに付くこと。
センダングサの花は、「武庫川の風景」に近く紹介しようと思ってますが、
黄色い素朴な野花で、ずっと前のレポートでも書きましたけど、コイツの種は いわゆる「ひっつきむし」の仲間。
「ひっつきむし」といっても虫やない、けど「ひっつこう」という意志を
感じるところが何となく虫っぽい、とその時のレポートにも書いた。
そして、私の解釈では「ひっつきむし」には、イガイガ玉みたいなものもあれば
ぺっちゃんこのカメムシみたいなのもある。折れた鉛筆の芯みたいなのもある。
とにかく「服にひっついてくる（イマイマシイ）ヤツら」のことを総称して
「ひっつきむし」と呼ぶ（ハズ）。
センダングザは、キク科の花で、タンポポの咲く前みたいに花はキュッと
つぼまっている。バアッと派手に広がらず、そこが慎ましい。
「やはり野におけ．．」の類で、野原では実に可愛らしく、それでいて
きらっと光っているけど、持ってかえると輝きが失せてしまう。
秋が終わり、冬枯れの季節になると、このセンダングサも
種の保存と繁栄のために種をつくる。
何度も言うようだけどキク科だから、ぎゅっとつまった花弁の一つ一つが
種を作る。
このセンダングサの種のつけ方が、まーなんというか、本能に忠実というか
「種の保存と繁栄」が露骨というか、あのつつましやかな花の時代からうって
変わって、「さぁ、どや！どや！どや！」というかのように、
前後左右上下360度全方向ＯＫの針（これが種）の花と化して、
そばを通るものにひっつく。
風にゆれているときは「満開の針花火」状態をしっかり維持しているのに、
ひっつくときにはあまりにもあっさりその球形を解消して、バラバラになりつつ集団でひっつく。
ひっつかれたこっちは、「あぁっ！！いつのまに！」。
「あーここにも、あっこっちも、えぇっ〜、ひぃぇ〜いまイマイマシイ．．．．」
一瞬自分がヤマアラシかウニになったような気がする。
よく観察すると、その針状の種のひとつひとつに２本のカギ型のとげがあって
ちょうど昆虫の足先みたいに衣服の繊維に絡み付くしくみ。
絡み付いたもののなかには、いつのまにかもぐもぐと衣服の中にもぐりこんで、
おもわぬ場面で、なんかチクチクするな〜、と思ったら．．．ということもある。
ま、自然界の仕組みは無駄がなくよく出来ているのさね。
ところで、前置きがえらく長くなってしまったけど、この「センダングサ」の名前が
気になる。どことなく格調高い気がするし、ちょっと中国漢方の香りが漂う．．．
などと思って調べていたら、なんと「センダン」は「栴檀」でこれはつまり「白檀」の
別名だとのこと。おぉ！ビャクダン！。あの夏の扇子のアレ。
しかしそのあとを読むと「センダングサ」が香るのではなく、ただ葉っぱのカタチが
栴檀の葉に似ていることから付いた名前だとの事。
しかも、さらに読むと、この栴檀＝白檀というのは「栴檀は双葉より香し」のオハナシの
場合だけで、実際は栴檀の木はちゃんと白檀とは別にあるとの事。なんだぁ。
それにしても「栴檀は双葉より香し」て、どーゆーこと？、と思って調べたんだけど
これはまた話しが長くなるので別の機会に。
にしても、センダングサの葉っぱに似ているという、（白檀ではない）栴檀の木とはいったい
どういう木なのか、更に疑問は果てしなく沸き上がる。
で、栴檀の木を調べると、おぉ、インターネットはこーんな便利な時もあるのか！、群馬大の
青木先生のページに最高の情報を見つけた。
この青木先生の植物園のページで「さ行で始まる植物」の中に、あった！あった！
栴檀もセンダングサもきっちり鮮明な大写真つきで解説がある。→青木先生の植物園のページへ
すばらしい！。（もう「武庫川の風景」に載せるのはやめよう）
で、話しはまだ続くのだけど、
この栴檀の木の写真を見て、私は「あっ」と叫んだ。
これって、あの木だぁ。あの木。あの木は栴檀の木だったのか．．．．（<<<感動>>>）。
秋の終わりに象牙色の実をたわわにつけるので、いつも気になってたんだ。
鳥がよくやって来て、実をついばんでたし、岸辺を歩いてると丸いこの実が流されてきている。
私はひとりで感動してしまった。
手袋やスウェットにくっついて離れないあの「ひっつきむし」とあの「リッチに実のなる木」は
こんなところでつながってた。
この二つの植物の葉っぱが似てるなんて、しょっちゅう両者を見ていても全然わからなかった。
ふーん。そーかー
なんだか
私はとっても満足してしまった。
川原を毎朝散歩していて、いろんな物を拾得します。
今まで、いろんな物を持って帰って、
ある時は後悔し、ある時はニカッとほほえみました。
これまでの拾得物で特筆モノは、まず
直径10ｃｍほどの貝の化石。これはもしかして貴重なブツかもしれない、
このまま川原で砕かれてしまっては、と思って持ってかえって、
今は文太の物入れに転がっています。
そのうちにインテリアに使おうと画策中。
次にクローバの苗。
河川工事のあと、茶一色の原っぱにぼつぼつと緑が戻り始めたころ、
掘り起こしやすいクローバの個株を5つほどゲット。
それがラッキーな事に「四つ葉のクローバ系」の株だったらしく、
今玄関先では、結構沢山の四つ葉のクローバが茂っています。
この寒さでも青々として、
これって芝生がわりにいいなぁと悦に入っています。
この「苗ゲット」作戦は、これからも続行の予定。
それから、石とか砂。
これは、川から持ってかえるものの定番かな。
昔、「石」が趣味だった父に連れられて、
あちこちの川に行った事があります。
持ち帰った石は父の手で磨かれ、 まさに悠久の歴史を現わす岩石の置物に変貌するわけです。
でも私はグラインダを持っていないし怠け者でもあるので、
石より主に砂をリュックに入れて持ち帰りました。
これを庭のぬかるんだところにばらまくとグッド。
でも結構大量に必要で、毎日のその背中の重みにすぐに挫折しました。
川へのこれまでの散歩で、なによりその多さに驚き、
そのいくつかを持ってかえりもしたのは、「ボール」。
これは、先にあげた化石や野草苗や石砂とは違って、人工物です。
小はテニスボールから大はバスケットボールまで。
ケロンパの幼児用ボールから、公式サッカーボールまで。
ありとあらゆるボールが流れのよどみにひっかかったり、
干上がった中洲に取り残されたりしている。
ケロンパボールには「＊＊＊けんた」と名前が書いてあったりする。
流域の人口密度の濃さをつくづく感じる。
山間の清流には決して見られない一種のゴミなんだろうけど、
それは単なるゴミにはみえない。
今の日本では人々の生活域を流れない川なんて無い。
その流域人口の「多い少ない」がその川の「清濁」を決めるのかもしれないけど、
流域人口が多い＝なつかしい川と呼ぶ人が多い、とも言えるのであって、
武庫川に沢山あるボールたちは、
そこに遊んだ人や子らの心を川につないでいる。
流れていってしまったボールに楽しくて切ない気持ちがたくされているように思う。
そういう川には、
ひとけのない秘境の川とは違う別の角度の「厚み」がある。
武庫川は、決して清流とは言えないかもしれないけど、
人々の想い出をよみがえらせてくれる程度には清さを保っていて、
人々の沢山の想い出をずっしりと背負って
頼もしい川でもあります。
えぇ、絶対間違いありません。
あの色、あの動き、大きさといい、場所といい、
あの鳥は、絶対！、カワセミです。
カワセミについては、ちょっと知ってるつもり。
貧弱な私のビデオライブラリの中で、きらりと光る逸品。
それはフジテレビの「リバーウォッチング集」の２巻です。
私は汚れた心をそれこそ清流で洗い流すために
時々取り出しては茫然と陶然と鑑賞しています。
一応知っている人にだけ申し上げますが、 その２巻には私が登場したものは含まれていません。．．．．．念のため。
その「リバーウォッチング集」で多摩川のカワセミを２回連続で取り上げているものがあって、
それは、もう素晴らしい作品なのです。
そういうわけで、カワセミの生態はビデオでしっかり脳裏に焼き付いていますから、
あの、あそこにいたあの鳥はカワセミに間違いない、と私は断言します。
川面に倒れかかった葦にとまって、斜め下の水面を一心に見つめる。
そして水中の獲物を見定めると弾丸のように突入して獲物（小魚)をくわえ、
わずかに空中ホバリングして、またもとの葦にもどる。
その動きはちょうど「α」の文字を勢いよく書くときに似ています。
敏捷で直線的な動きと、空中ホバリングが特徴です。
それにしても
あの、水辺の宝石といわれるカワセミが武庫川にいるなんて．．．．
私は嬉しくて．．．．．。
カワセミが清流にしか棲まない生き物というわけではないと思うから、
武庫川がキレイになったのだとか、そういう事ではなく、
ただ、武庫川で生きた本物のカワセミが見られた事がうれしい。
カメラが壊れた。
遠景を撮ろうとシャッターを押したら
シャ〜ん、と間延びした音がした。
次ちょっとズームかな、とズームボタンを押したけど
「あらぁ、ズームしないよ」。
おっかしいな、電池はこの間変えたばっかりだし、
と思って液晶窓を見ると、あらららら
液晶窓に出せる情報のすべて、フラッシュやら赤目やらズームやら
ナンカの数字や文字や記号、ありとあらゆるメッセージがいっせいに
チッカ、チッカチッカ、チッカ点滅している。
別に音はしてないのに
えらく騒がしく一度にいっぱいモノを言われてる感じがして
おもわず胸に抱きしめた。そうすると音が封じ込められそうな気がしたので。
続いてあわててケースに入れて、聞こえていない音をシャットアウトした（つもり）。
「なんか壊れたみたい．．．．．」
独り言。
その後、何事もなかったかのように散歩を終え、仕事に出かけ、
帰ってきて、翌日は双眼鏡をウエストポーチに入れ、いつもの通りに散歩、
そして仕事、帰ってきてその夜中、ふとカメラのチカチカの事を思い出した。
そろっーとケースから出してみると、おお何と！、
我がいとしのカメラは、けなげにも、２日前の川原で見たときと変わらず
あれからずぅっっとチッカ、チッカを人知れず続けていたのだ！。
私はちょっと心に呵責を感じ、「あした修理にだしたげるからねっ」と
ケースごとカバンに入れた。
でも、翌朝になるとそんなことはすっかり忘れ、
「なんかカバン重たいなぁ」と思いつつ一日が過ぎ、さらにその翌日の仕事の最中に
突然カメラの事を思い出した。「あぁっ忘れてたよー」。
でも、
もし今カメラケースをあけて、チッカチッカが続いていたらなんか辛いし、
続いてなかったらそれはそれでなんかコワイし、
そのまま梅田の「カメラの川原」へ持っていった。
「川原」の名前はなんかインネンめいて見えた。
「カメラの川原」であらためてケースから出したとき、
ああ、なんてことだ！
店員の手の中で、わがミノルタベクティス４０はやっぱりチッカチッカしていた。
私は店員の前でひそかに感動した．．。一方店員は、
「これは修理ですね(中略）．．第４ビルのミノルタに持っていかはったら？」
私は「カメラの川原」を出て、このケースのなかで今もチッカ
チッカしているであろう我がカメラのひたむきさに思わず涙しそうになった。
しかし「ワリとしぶといやっちゃな」という気もちょっとした。
その後、一件打ち合わせを終えて一路、第４ビルへ。
７階にミノルタのサービスセンターがある。
「いらっしゃいませ」と言われてケースからカメラを出すとき
私はもう、チッカチッカしてるのが当然のごとく思え、 ちっともカメラの事を「けなげ」だとも「ひたむき」だとも思わなかった。
なんだか、あまりに長い間チッカチッカが続いて、
こっちの心情が続かなかった。疲れちゃったのだ．．．．。
だけど、そのおかげでミノルタの人に適切に説明する事が出来た。
我がベクティス君は１０日間の入院と決まった。
今回のレポートは、ただ「川原つながり」というだけの雑談でした。
おそまつ。
今朝の散歩はまったく疲れました。
今朝はいつもよりおそく7時ごろに家を出たのですが、
出てまもなく、近所のシーズー犬「ブンタ」（偶然我が犬と同名）の奇襲をうけた。
この「ブンタ」はうちの文太の頭くらいの大きさしかないのですが、
超攻撃的、恐いもの知らず。ワンワンワンバンバンワンワンバンバンと、
頭がバンバンするような吠え声とともに、勇猛果敢、猪突猛進、前後の
みさかいもなく（犬だもんな）、文太にかぶりついてきた。
文太も私もびっくり。
文太はこの小さいながらも強烈な先制攻撃に一瞬ひるみ、
「おぉ〜〜、なんやねんコイツ〜」
と、大型犬の鷹揚さを見せたが、どっこい「ブンタ」はそんな文太のカッコつけを
完全に無視して、小規模ながらも鋭い波状攻撃を仕掛けてくる。
すると文太は見せかけの仮面をあっさりはずして、本性むきだしの超低音の恐怖のうなり声を
あげ獰猛な攻撃体勢をとった。
そうなると飼い主の私は、映画「居酒屋兆治」の背中の刺青が衆目にさらされた
ときのような気持ちになり、「ブンタ」はともかく文太の怒りを制止するのに必死。
ここで刃傷沙汰ならぬ牙傷沙汰になり、
「おとなしいと思っていたあのヒト（イヌ）がねぇ、
あっというまに相手を刺した（噛んだ）んだってさー、やっぱりアキタの
本性は恐ろしいんだねえ．．．．」などと言われ、行く道みちで陰口と後ろ指、
なんてことになるんじゃないかと本当におそれた。
しかし結果は「ブンタ」がキャンと鳴いておしまいとなった。
あーしんど。
でもまあよかった。さぁ文太行こっ！と一路武庫川へ。
文太もこころなし首を下げて、さっきの自らの大人げない態度を反省しているかのよう。
今朝の武庫川はとても暖かく、中洲の春の緑一色の草むらを歩いていると虫たちの
気配も濃く生き物すべてがこの季節を喜んでいるようでした。
文太も空を眺めたりして、自然の讃歌に耳を傾け心から楽しんでいるように見えました。
ところが！、
ヤツは急に、前方の川の入り江とでもいうような浅瀬に注意を向けたかと思うと
近年にない全速力で走り始めた。全身全力疾走である。
こっちは「春だにゃー」などと気が緩んでいたので、テキの一瞬の変貌に対抗の
体勢をとることが出来ず、腰でつながれた一蓮托生の身は一緒になってとりあえず
走るしかなかった。
腰を前に突き出す格好でまったくカッコ悪く走ったのだけど、文太はそんなこと全く
おかまいなしに（ま当然か）、水の中にジャンプして突進した。
浅瀬だとおもったそこは意外と深く沼のような様子だったのですが、そこにはすでに
文太が飛び込み暴れまわって文字どおりドロ沼状態。
私は水際で瞬時とどまってようやく事態を見定めた。
鯉である。
ものすごく大きい鯉が３メートルほど先の向こう岸の浅瀬で背びれを丸出しにして
跳ね回っている。
さっきの「ブンタ」よりはるかに大きい。
文太は北海道のひぐまを思わせる動きで追い掛けまわし、私はそのパワーで
顔から泥に突っ込む恐怖にかられた。
一瞬の（えらく「一瞬」がおおいけど）判断の後、私は履いているゴム長が
絶対役立たないと思われる深みに向かってズブズブズブ。
想定10倍の重さになった両足を引きずって対岸に近付いた私は、しかし、
文太より興奮した。
うわぁっ！ぐわぁ！きゃあぁ！とたぶん声を上げていたと思う。
1分後、
私は手づかみで！60cm級の鯉をゲットしていた！！。
お、重い。
すぐに地面に落としてしまって、鯉は口をパフパフして暴れた。
その口の大きさ！。
くちびるがブ厚い。
うろこが大きい。10円玉位ある。嘘じゃない！。ほんとにうろこがデカイのです。
あのこいのぼりのうろこは決してデフォルメされたものじゃないと確信。
しっぽ近くにちょっと怪我をしている。
文太にやられたのかも。
あわててカメラを取り出して、ドキドキしながらシャッターを２回。
うまく撮れなかったような気がするけど、
なんかどうしようどうしようとうろたえてしまって、またいそいそと
カメラをしまい、
しゃがんで観察、立ち上がって感嘆。
そーだ、釣りのおじさんもみんな水に返してるんだと思い至り、
見るともうグッタリしていて、死んじゃだめだよ、今帰したげるからね、
と、捕まえた本人のくせに聖人ぶって、そのわりには手じゃなく足で、
そろそろと水に帰した。
水に戻るとまたバシャバシャと音をたてるので、
飼い主の興奮ぶりにしらけきってそこらの草におしっこをかけていた文太が再び興奮。
そこでまたひと騒動。
こっちはすでにゴム長の内も外も水浸し状態だから、
もうやけくそになって犬人の区別なく水の中で暴れまわる、という選択肢も
あったけど、肝心の鯉クンがあっというまに懸命に逃げ去った。
そこで、ようやく理性を取り戻し、おかに上がった。
両のゴム長からは、まるで漫画のように大量の水がこぼれ出た。
空をみて、ふうっとため息。
まったく、きょうの散歩はつかれた。
でもね、昔々の、夏休みのプールの帰りみたいな感じがしたなぁ
