1997/7〜9
『対岸はステキ』:97/7/11 『風雲急を告げる』:97/7/27 『川向こうの学校』:97/8/11 『砂』:97/8/19 『空中跳躍』:97/9/6 『完璧虹』:97/9/23
 武庫川散歩レポート 1996年 10月〜12月 |
| 武庫川散歩レポート 1997年 1月〜 3月 |
| 武庫川散歩レポート 1997年 4月〜 6月 |
| 武庫川散歩レポート 1997年 7月〜 9月 |
| 武庫川散歩レポート 1997年 10月〜12月 |
| 武庫川散歩レポート 1998年 1月〜 9月 |
| 武庫川散歩 今 |
夏が近づくと、武庫川は、全体に広く浅くなってくる。
水量が減ったといっても、水は澄んでいます。
せせらぎが川原に広がって、石の上を水がはじけながら光っています。 その岸辺には気持ちのいい砂浜もできている。
その上今年は台風が２つもやってきて、空気がきれい。
もう、どれもこれもが、
「対岸へ渡ろう！」と呼びかけています。
みんなで「渡って！、渡って！、どーぞワタって」といっているかのよう。
だから、
わたし、わたりました。
渡った．．．
ほんの１０ｍほどの距離なのに、気分はまったく違う。
なんか、大袈裟だけど、国境をわたった感じ。
人々のいるサイクリング道まであがると、もうまるで自分が異邦人のよう。
走る人、釣る人、歩く人、拝む人（朝日を）など、みんな目的を持った人ばかりで、 突然川原からあがってきた私達だけが呆然とたたずんでいる。
（いつもは私、私なのに、急に心細くなって文太を引き上げて私達なんていってる）
言葉通じるかなぁ、というのは大袈裟ですが、似て非なる異文化圏に来たみたい。
「みーんな知らん顔してるから言ってしまうが、
我々は川を渡って侵入した密入国者だぁ。どーだ！」。
なんてね。
いつも遠くから眺めている景色が目の前にある。
ということは、ここからみる我が岸辺は．．．．．と振り返ると、
・うーん、なんか、あっちも急に異国風だ。
・東向きなので、眩しくてじっくり見られないよ。
・でも、そーか、歩いてる私達はあんなふうなバックグラウンドにあーゆー風にみえるのかぁ。
うーむ。
この西宮市にはしょっちゅう来ています。
すぐそこの甲武橋を渡ればそこが西宮市です。西宮市のことはよく知っている。
でも、それは、わざわざ川を渡って市境をこえることとは質の違う問題です。
新鮮感というものは日常に散らばっているね。
ちょこっと角度を変えたら景色はすっかり変わる。
また行きたい。
癖になりそう。
えーっと、言っておかなくてはいけないこと（お子様向け）。
私には文太という力強いみちづれ犬がいるからできるけど、
（今のところの武庫川の状況では）誰にでも渡れるってわけではありません。危険です。
ほんじゃ。
きょうのレポートで、台風関連の事を書かないわけにいきませんね。
昨日、今年３つめの台風である「台風第９号」が通り過ぎました。
まだ現在日本海にじーっとしてるそうで、「台風一過」の天候にならない。
このところの台風の雨や集中豪雨で、武庫川は本当に次々と表情を変えました。
梅雨でもあまり降っていない時は、堰堤が乾きはじめて、
あー今年の夏は干上がるかぁーと思わせました。
ところが、梅雨時の２連台風と長雨（＆集中豪雨）で、
「川原の石は乾く間もなし」という状況に。
それどころか、私が今まで見たこともないほどの「大河」と化した雄々しい姿も見せてくれました。
→「武庫川の風景」−「大水」
川の水量の増減に関しては、上流の森林伐採による保水力の低下などが指摘されます。
そうかぁ。そうなんだろう、と思いますが、
私がそれを語るには今あまりにデータ不足、勉強不足なので、知ったようなことは言えない。
ただ、毎日河原を見ている身としては、雨の後「おぉっー！」という変化があると、
実はうれしい。「すごい、すごい！」といいたい。
そして、
凄みのある自然の本気を、味わいたい。
で、今回の台風第９号ですが、
ここらへんは直撃コースかと緊張しましたが、どうも徳島から西にコースを変えたようでした。
台風というのは「来る、来る来る来る、来たぁ」とやってくるのが分かるから、
不謹慎ながら、不安の中にも期待が混じる。
どんな恐ろしい目に会うのか、懐中電灯を準備し、家の周りを見回って、
もしものときの想定をいろいろし、
最後に「あー、ビール買っとこ」なんて、傘も壊れそうな強風の中、近くの自動販売機へ。
しかし、ま、今回も、
しこたまビールを飲めて、大禍なく、よかったです。（．．．うちのあたりでは、です）
でも台風の前の散歩では空の様子が不穏で、
雲がものすごいスピードで西へ流れ、
「風雲急を告げる」という言葉や「幕末の新撰組」をなぜか思い浮かべた。
あのような大きく広がる空間で見上げる空の雲の動きの荘厳さというのは言葉では表現できない。
そして気持ちの中で再現しようとしたら、映像とともになぜかＢＧＭが聞こえてくる。
とにかく
実にドラマティックな空が３６０度見渡せたのが、散歩の収穫でした。
毎朝、武庫川に行ってます。
こちら尼崎市側からの堤防を越えると、目の前にもちろん武庫川の流れ。
そして、その向こうには当然、西宮市側の堤防。
その堤防のすぐそばに塀があります。それは学校の塀で、そこに建つ校舎には垂れ幕が3本。
この学校こそ、この夏の甲子園、兵庫代表の報徳学園高校です。
先日の１回戦では延長の末、６対７で勝ち進みました。
思えば、武庫川の堤防にあがるたびに、意識しなくてもその景色の中にずっとこの学校があったわけで、
遠く高い位置にある六甲の山なみ、そしてぐっと手前、川のすぐ向こうの報徳学園の塀と校舎は
小さい頃から見慣れた武庫川という舞台の名脇役として、深く印象づけられています。
しかし、
高校野球出場に関しては、私には
報徳＝甲子園という図式が明確にあって、
特に興奮しなかった。ふ〜ん、という感じ。
でもよく聞けば、報徳学園の夏の出場回数は８回ということで、あまり多くない。
報徳学園が優勝した年もあったし、
ドラマチックな逆転劇を演じた事が有名でしたから
もっと頻繁に、甲子園の常連かと思ってた。
センバツへの出場率がいいのかもしれません。
とにかく、それでも、やっぱり、兵庫県は広いしね、
すぐそばの報徳学園が甲子園に出てるんですから、
私は、きっちり応援してます。
本当は、私の出身校『あまきた』（県立尼崎北高校）が出てくれたら、最高なんだけど。 （ダメダメってか？）
大水が出た後、河原は一面の「湿った砂漠」状態です。
あの褐色の濁流を見れば、褐色の砂が残るのは当然とも思える。
しかし、
それも3日程すると、あらら、砂はどこへ行ったの？
元の通りに石ころの河原になっている。
もちろん石ころの下に砂があるのですが、
いったいいつどうやって、石が上へ砂が下へ移動するのか。
よく、植木ばちなどをトントンしてると、粗い小石が上に上がってきます。
でもねぇ、大水の跡、地震はなかったよ。
人がくまなく歩いてトントン効果となったとも思えないし。
うーん、
いったいどういうことか。
わからん。
とにかく、数日すると河原は元どおりの石ころの原になる。
でもね、一部に完全な砂だけの小さな丘陵ができてます。
そこがまた気持ちいいいい、い〜い。
きれいなさらさらの砂だけです。
学校の砂場みたいに、猫のウンチが出てくることもないし、
よくここまで！と思うほど粒の揃った美しい砂です。
実は、白状しますと、
毎回２kgほどを、リュックに入れて持ってかえってました。６回ほど。
庭にまくと水はけもよくなって、
とてもいいんだもん。
武庫川の河原は砂石が堆積して、堤防外の土地より高い「天井川」のはずですから、
みんなで、砂石を取り除いたらいいんでは？。
なんて、
都合のいい話かな。
最初、雨が降ってきたのかと思った。
堰堤でせき止められた川面に、ポツン、ポツンと水紋。
ポツン、ポツン、ポツン、ポツン、あちこちにある。
でも空は晴れている。
じっと見てすぐにわかったのだけど、
そのポツン、ポツンの一つ一つは、魚が跳ねた跡です。
魚の空中跳躍。
じっとたたずんでいる間、
雨紋と間違えるほど絶え間なく数限りなくジャンプが繰り返されます。
「観察の目」になれば、ジャンプの瞬間、銀色の腹が躍り上がるのが見えます。
堰堤の下。
石ころの上を速い流れが音を立てているその水面にも、
流れに逆らうように、小さな力強い跳躍が繰り返されている。
もう少し川下の穏やかな深い流れ。
ぼんやり水辺で、釣り人の様子を見るともなしに眺めていると、
「ドボン」と大きな音と川の真ん中のでっかい波紋。
最初は、釣り人が、何かの意図があって石を投げ込んでいるのかと思いましたが、
どうも違う。
それは、やっぱり魚の空中跳躍の音だったのです。
しかもこの場合は、結構大きな、数十cmというシロモノが、釣り人をあざ笑うかのように竿の先でジャンプしていたのです。
水辺を歩いていると必ずといっていいほど、このドボン音を聞きます。
いつかはその決定的瞬間をカメラに納めたいと考えています。
それにしても
いったいなぜ。
あり余る力をもてあましているのか、
一種の修行を積んでいるのか、
遠い祖先から受け継いだ本能の指示か。
私は「えらい嬉しそうであるなぁ」と、いつも思います。
ともかく、川のあらゆる所で、魚達がどんどん水面から飛び上がっているわけで、
そのエネルギーはすごいものがある。
「川は生きている」ということを実感します。
あの完璧な虹をみましたか？
台風１９号が通り過ぎた17日水曜日の朝。
まだ台風一過とは言えないぼんやりとした空のしたで
ぼけーっとした犬連れ人(人連れ犬？)が、ふと空を見上げたら．．．．
おおおっ〜！ に ぃ じ ぃ だ ぁ ！ ！
それは全く！絵本に出てくるよりも完璧な
くるりと巨大な半円のすっばらしい虹でした。
ま正面に六甲山脈中腹の甲山。
その甲山を中心に
天頂は真上といっていいほどの位置。
左の足はついそこの甲武橋のたもと。
右の足もすぐそばの報徳学園のむこう。
なんてこった！。
ものすごい完璧な虹が、わたしを中心に出来上がっている。
色も完璧。
どこも欠けていない。
人に言っても、絵に描いても嘘っぽくなってしまうような完成度でした。
-------------
身の回りの様々な色をみて、人工的だと思う事がある。
プラスチック。蛍光マーカー。ポリエステル毛糸。
一方、自然や環境という言葉からは、深緑や茶色、水色が連想されます。
でも、
すべての色は自然からもらったわけで、
どんな奇抜な色も、あの虹の中にある。
どんな奇抜な色も、自然の一部だ。
黄緑のネイルカラー、青紫色のルージュ。
どきっとする装いも、考えたら虹色の中で遊んでるだけ。
-------------
その虹は
写真を撮りたくても、被写体が大きすぎてぜんぜんだめでした。
でも、その完璧な虹の真ん中にいたら、
自然には何もかもがそろってるのだぁと、
そんな感覚がふわりと降りてきました。
