------------- 〜 中上流域編 〜 -------------

『武庫川と地形』 :2006/ 8/31
『ふきのとうとつくし』 :2006/ 3/27
『寒好犬』 :2002/12/ 8
『一瞬の渓谷』 :2002/10/22
『農業の水』 :2002/ 9/24
『おげんきですか』 :2002/ 8/26




〜 中上流域編 〜






「武庫川と地形」

2006年8月31日

ある記事を見て、武庫川全体のかたちを考えました。

普段は川の一部分、せいぜい2キロほどを知っているのが川沿い住民です。
それでもその流れに癒され、その香りを求め、その景色を慈しんで川に 近づきます。みなそれぞれ、自分の領域内でその川を愛している。

流れのそばに立って、水の躍動を眺めていると、たゆみなく流れてくる 水のそもそもの由来やこの先の行く末にちょっと気持ちを馳せてみることが あります。そもそもはどこから来たのか。これからどうなっていくのか。

そうやって、武庫川という水の通りの全体を(気持ちの中で)俯瞰していることが 時々あります。

そんな折、三田市の広報に武庫川に関するコラムが載りました。
「市内を貫流する武庫川は、源流(篠山市)から河口(西宮市)まで７つの市を流れ、 全長65.7kmあります。市内はそのうちの25.6kmを占め、流域に肥沃な土壌を もたらし、三田は三田米を始め、豊かな農産物の産地として発展しました。(･･中略･･) 　武庫川は私たちにとって身近な河川ですが、他の川とは様相が少し違います。 武庫川で一番高い所(標高196m)に、加古川に注ぐ篠山川との分水界があります。 そこから標高が150mになるには、およそ30km下った三田盆地まで流れることになります。 通常、渓谷は川の上流で見られるものですが、この河川は著しく勾配が緩やかで、 三田から上は上流域でありながら、三田盆地を通過するまでは流れの穏やかな 中流の川の様子を示します。ＪＲ道場駅あたりから名塩(西宮市)付近までの間は 様子が一変し、荒々しい渓谷になります。(以下略)」(三田市広報：H18/4/15)
私が注目したのは、この川はスタート地点から46m下るのに30kmをかけているという 点です。はじめっから河口付近のような緩やかな流れで湾曲しながら恵みを もたらして流れていたということ。そしてその流れを下流域へと流れの勢いをリードしたのは名塩以降の渓谷であるということ。 そして渓谷を経由し、その後再び穏やかになった流れが宝塚西宮尼崎地域へ恵みを 染み渡らせたということ。

人間の営み、大げさに言えば「文明」が川に大きく依存していることを思うと、川を 大切にせずに人間の豊かさや潤いはないだろうと思うし、実際に、三田地域と宝塚以南の 平野部の繁栄を思うと、川の大切さは限りないと思うのです。

かつて下流域から三田市に移住するとき、川の上流＝渓谷　を期待していたのに、来てみたら、ただ川幅の狭いフツウの川だった、ということでちょっと落胆したのですが、それも上の記事を見て「あーそいうことだったのか」 と納得しました。
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「ふきのとう」と「つくし」

2006年3月27日

　春の雰囲気がすこーし感じられるようになった．．．と思うと次々と目にする「春の証人」。 まだ雪なども降ったりして頭頂を凍傷で黒くしながらもつくしが頭を出します。つくしの“先発隊"です。 これを見て、つくし狩りなどを計画するとこれが駄目なんだな。本当にわあっとあっちにもつくし、こっちにも つくし、あぁっ！踏んでしまったじゃないか！、という状態になるにはこの頭の黒い“つくし先発隊”を みかけてから２週間は必要です。
　その待ち時間を埋めてくれるのはふきのとう。朝の散歩で、確か去年はこの辺にふきのとうが出ていたのになぁと 探しながら帰ってくると、なんとっ！灯台もと暗し、うちの庭に７つも見つけてしまいました。
そうだった･･･。去年「ふきのとうが庭に出るのが夢なんです」と言ってご近所のおじさんから、ヤマブキの苗を たくさんもらって、柿の木の下に植えたんだった。すっかり忘れていた。
　尼崎では大昔の子供の頃につくしを摘んで母に料理してもらって以来、見たこともないつくしの群生が、ここ 三田ではあたりまえに見られる。幼児向けの絵本でしか見なかったふきのとうが、おお！なんと自分の家の庭に出る。 このぜいたくさ。
　あんまり大きな声で言いたくないけど、そばの小川ではシジミが採れるし、初夏には蛍だって（！）。 なんで大きな声で言いたくないかというと、都会の業者の人がやってきて一網打尽にして以来、長いこと 見かけなくなった、とかいう話を耳にするからです。
　武庫川の土手は最高の“つくし場”。春先からは、朝の散歩の場所もあちこちへわざわざ車で出かけて このうれしい春の息吹きを胸いっぱい吸い込んで、体いっぱいあびて、できることならエラ呼吸して武庫川の水に 頭から突っ込みたい気分です。

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寒好犬（寒さ好きの犬）

2002年12月8日

　すすきがフワフワと白く立ち枯れてきました。冬がやってきたのですね。この今日の空のうっとうしいこと！。 このごろは夜明けが遅いし、日暮れは早いし、洗濯物は乾かないし、灯油はすぐに足さないといけない。 部屋をあたためると、犬はすぐに出て行くし。
　そうです。文太は暖かいところは苦手らしい。そばの山から夜に降りてくるイノシシの気配に吠えまくって ご近所から苦情がでて以来、ときどき家に入れるようになったのですが、もともと室外犬ですから、 部屋が暖かくなっていい感じになってくると、突如起き上がってブラインドにバシャバシャと頭を突っ込む。 外へ出たいのです。猫のようにコタツで丸くなるということがない。外に出すと、一度全身をブルってちょっとこっちを振り返ったあと、首をシャンとたてて、ゆっくり暗闇へ歩いていきます。
　寒かろうという親ごころで、しばらくしてそっと見に行くと、山の神と対峙するかのように座っている後姿が見える。 イノシシを警戒しているのだ（とおもう）。座っている犬の背中というものは、あれで結構哀愁があるもので、 どことなく少し肩を落としたふうなそれでいて真剣に山を見張っているふうな背中が、けなげなような滑稽なような．．．。

　散歩で川の水面近くまで降りていくと、たとえ氷が張っていようとまっすぐ進入（進水）していく。 その様子がなんともうれしそうなので、ついこちらもゴム長と手ぬぐいというドジョウすくいファッションとなり、 水遊びに付き合うことになる。
　寒いということが好きな犬とこうして付き合っていると、寒さに好感を持つようになり、早朝の 厳しい寒さの中を散歩することに行動の美学というか自虐的陶酔というかアイデンティティの確認というか、 そんなもののごた混ぜ的感覚にとらわれるようになる（はず）。で、平気平気状態で 夜明けの散歩なんてところまでエスカレートする。
　だけど、凍った道でつるりんとすべり、3回連続で後頭部を強打して、ちょっと自分を取り戻した、というのがこの前の冬の私。このごろはそこそこ早朝に散歩してます。
　
今年1月の雪の朝








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一瞬の渓谷

2002年10月22日

　三田に引っ越した当初から、武庫川渓谷のことは気になっていました。 いや引っ越す前から一度は行ってみたいと思っていた。（「武庫川の情報」にも田中氏の写真を載せさせてもらっています。）
　武庫川渓谷は三田市から宝塚市（このあいだに西宮市もはいってます）へ至る途中の 山々をぬって流れる武庫川の景勝地です。地名で言えば武田尾のあたり。ハイキングコースともなっていますが、春は桜、秋は紅葉、その足元に自然のままにはげしく踊る水のしぶき、巨大な岩が流れを阻めば深く透き通る淵となって、その変化もすばらしい。JRの廃線跡や暗黒トンネル（廃線だから通れる）もあって、なかなか美しくも厳しい、けどだから嬉しいコースなのです！（行ったことないけど）。
　しかし、三田に住んだからには、大阪への行き帰りにこの武田尾をJRで通るわけで、期待はふくらみました。はじめて、JRで大阪に向かったとき（それまでは車でした）私はドアのそばに立ち、おでこと鼻をガラスに付けんばかりにして外の景色をみつめていました。
　三田を離れいよいよ山が近づいてくるころ進行方向右手に武庫川が見えてきます。このあたりは川幅もそこそこ広く、岸も自然のままで、ただ堤防に桜がずぅっと並んでいます。まだ若い桜。そういえば、篠山のほうまで武庫川沿線には桜が植えられていたなぁ．．と思いにふけっていたら、おわっ！トンネル！。突然真っ暗になった窓に映るシラケた自分の顔に思わずのけぞったりして。えぇっーこのまま宝塚まで真っ暗で行くんやないでしょうね。それはあんまりでしょう。たのむデ〜。と！突然ガッっとトンネルが終わり、おおっ！そこには武庫川のりりしい姿が！目玉を飛び出さんばかりに見開いて「あぁっこういう景色が見たかったのよ〜」と思うまもなくボン！と再びトンネル。そらあんまりやろう。もうちょっと見せといてくれてもええんちゃう、と思ったら再びカーンと青空。おとととと窓に寄ると、おーイイじゃんすごいじゃん。渓谷じゃん！。じゃんじゃんこういう景色で、、、、ボン！トンネル、ゴォーー。沈黙．．．。ちょーっと短かすぎるよな。あんまりだ。と、心の声が口に出そうになったとき、あれっ！駅だ。武田尾だ。（快速なので通過）。あーここが武田尾かぁ。そーかー。おっ！また景色だ！あっ綺麗！きれぃ〜！ん、ボン！ああトンネルかぁゴォ〜〜〜。
　もうまったく疲れる。実に疲れる。しまいには、もうずぅっとトンネルでいいです。宝塚まで静かに穏やかに暮らさせてください、と思うほど。
　しばらくすると、快速は西宮名塩という駅に停車。この駅がしかしまた良いんです。渓谷の上にかかった橋がそのまま駅になっているという感じ。半分トンネルのなかで、半分が渓谷の上。こういう駅から毎日大阪に通っている人ってどんなだろ。うらやましい。
　名塩を出ると再びトンネル。ゴォーガーゴォー。そうしてトンネルが終わるとそこは宝塚の街。なんとなく”ふもとのまち”へ降りてきた気分。空気もどことなくやんわりしている。しかし、そのとき既に立ちっぱなしで来たことを後悔し始めていて、その後の大阪までの長かったこと。
　
　それ以来、立って景色を見ることはなくなった。そうすると、あのトンネルのゴォーガー音が優秀な睡眠導入効果をもたらしてくれることがわかりました。ほわんと気がつくといつもトンネル群を抜けていて「Zzzz・あ、宝塚かぁ　」もしくは「Zzz・・あ、三田かぁ　」という具合。
　まったく、あの最初のときの真剣な観察の目はどーしたんだ！。そう思いつつ、さらには一度は途中駅に降りてみたいと思いつつ、あの憧れの武庫川渓谷の断片を一瞬みるのが精一杯の日々です。


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農業の水

2002年9月26日

　ひろびろと広がる田んぼの間を散歩しています。よくみると、山のほうから田んぼごとに、わずかな段差をつけて、川下のほうへ田園が広がっています。上の田んぼから下のほうの田んぼへ的確に水を誘導する仕組みが出来上がっています。
　こういう、排水ではない"用水"の水路を、最近あまり見ることがなかった。
　
　たまに見る水路はすべて"排水"。もう用済みの水だ。いらなくなっちゃった水。早くさっさと流れていって。どこかしらない機関で再生されるかとっとと海へ流れ込むか。
　
　しかし、ここでは違う。上の田んぼで用が済んだら次の田んぼが待っている。水は大切に導かれて一滴とも無駄に流れない。分かれてはまとめられ、せき止められては放されて、行く先々で用が待っている。
　モトめられて〜ステてられて〜、もうどうにでもしてェ〜という水滴君のＣＭがあったけど、この農村では、水路の水はそんな投げやりには見えない。となりの田んぼがいつだって求めている。だから勢いが違う、輝きがある、そばの雑草やコケが沿道で旗を振るファンに見える。

　水って本来こういうふうに何度でも役に立つ頼もしいヤツだ。こんなに何度も使われても、田んぼで使われている時は濁ったりしない。澄んだままだ。使われつつ浄化される。これはもしかしたらすごいことだ。そして、農家では水こそが天下のまわり物で、農家間の協調のベースをなすもの。水だけは自分一人のものにすることができない。
　
　農村を知らなかったわけじゃないけど、こうして近くに住んでみると立ち止まって見つめて考える。考えて見つめてそしてぼおっと感じてる。ぼおっと立つ私に秋風がふいて、頭の上は高い空がひろがっています。
　 　


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おげんきですか。

2002年8月26日

　大変ご無沙汰していますが、おげんきですか。
　三田市に移って１年半以上、 「武庫川散歩」前回の更新からは約２年が過ぎようとしています。2年の間に インターネットの世界もずいぶん様変わりをしました。 でも、ここ「武庫川散歩」は相変わらずののんびりペースで行きたいと思います。 そして、川のことのほか、田舎のくらしのことも、ぼつぼつレポートしたいと 思っています。

　こちら三田での朝の散歩で初めて武庫川をみたときの感想は「なんて狭い！」　 それから「工事だらけだ」。
　かつて、下流域で武庫川に親しんでいた私としては、 あの広々とした川原、家の建てこんだ地域にぽっかり開けた風と水、 光と自然の広い空間、それが武庫川だった。 対岸は別世界、とまで思わせるような川幅がまさに武庫川だったのに。　　 こちらは、川以外の地面がすでに広々していて、川はただ水の通り道。 しっかり護岸工事が施され、急なコンクリートブロックを降りていくとすぐに水。 川原というものがない！。しかもその水は以外にも濁っている！！。 　上流にきているのだから、川が狭いのは当然だけれど、いろいろと思惑が違って 少し失望したことは事実です。

　けれど、今年の春になって工事の生々しさも薄れ、小さいながらもぽっかりと中州が でき、そこここに白鷺やアオサギがたたずんでいるのを見た。さらに、 5月に、下流域で見たと同じような鯉の群集。水面が盛り上がって水しぶきがあがっているのを 見つけたときはドキドキするほどうれしかった。

　そうして、この夏やっと「武庫川散歩」を再開です。
　この１年に少しづつ写真も撮りためましたから、なんとかやっていけるでしょう。


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